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【高級マンション&ホテル】日建スペースデザインがデザインしたプラウド恵比寿ヒルサイドガーデン&プリンス スマート イン恵比寿を紐解く【野村不動産】

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今回紐解くのは
ラウド恵比寿ヒルサイドガーデン
というマンションです。

公式より引用:https://www.proud-web.jp/magazine/architecture/photo_45/photo_45.html

プラウドは野村不動産のマンションシリーズです。
このマンションは日本では珍しくマンションとホテルが一体となった計画です。
ただし、いわゆるホテルのブランド色が強くホテルのサービスを受けられる”ホテルレジデンス”というよりは、マンションとホテルが同じ開発の中に同居している、という意味合いが強いです。

現在工事中の
虎ノ門麻布台計画の”アマンレジデンス”や
東京ミッドタウンの”ザ・パークレジデンシィズ・アット・ザ・リッツカールトン東京”
のような5つ星ホテルのマンション、という位置づけではありません。

そんなプラウド恵比寿ヒルサイドガーデンのデザインを紐解いていきましょう。

プラウド恵比寿ヒルサイドガーデンとは

プラウド恵比寿ヒルサイドガーデンとは
野村不動産が手掛けた、恵比寿駅近くに位置する高級マンションです。
恵比寿駅西口徒歩5分の好立地で2020年竣工、大通りより少し入った場所に位置しています。

そんなプラウド恵比寿の目玉の1つは立地条件です。
駅近くでありながら、建物の立地は高台になっており地面からの視線が通常より遠い作りになっています。
併設されているホテルのラウンジやカフェも高い位置にあるためプライバシー性が高いのが特徴です。
なぜこのようなプロジェクトが可能だったか。

敷地は旧国有地で、国が売却にあたり、事業者に対して提案型コンペを行った結果、野村不動産が選定されました。
過去20年間、山手線内徒歩5分以内の物件は276件で、うち住居系は58件、恵比寿駅が最寄りは6件(うち野村は今回を含め3件)しかなく、しかも今回の敷地面積は約4,035㎡と広く、この希少性が富裕層の心を捉えた。

引用

つまり、恵比寿駅至近のまとまった敷地の大規模開発というのがほとんど無いということです。

階数は地上11階ですが、普通に建てると13階建てくらいにできます。
しかし、邸宅にふさわしい空間つくりのために戸数を増やすのではなく住戸の高さをとる選択をしました。
結果的に天井高さが2.6mを確保でき、通常のマンションよりも一線を画す空間になっています。
(普通は天井高さは2.2m~2.4mくらいが普通)

そのため、戸数は88戸と意外と少ない戸数になっています。
しかし、都心の場合それが希少性につながり金額上昇の要因となることもあります。
それを示すかのように、坪単価はなんと、、、

900万/坪

駅近、大規模、戸数の要因によってこのような坪単価が実現できているのでしょう。
現在売りに出されているこちらの物件は100㎡で2億9千万円なので、
およそ950万円/坪なので、順調に値上がりしているのでしょう。

引用元

デザインの特徴

デザインの特徴は下記になります
・軒天の三角形金属パネル
・外構の石張り
・金属パネル+ガラスの手摺

では1つずつ見ていきましょう。

特徴的なバルコニー軒天

デザイン上最も特徴があるのはバルコニー軒天でしょう。
下記画像の白い三角形になっているところが該当部分です。

バルコニー自体の形状は平面的に少し折れ曲がってはいるものの、そこまで特殊ではありませんがこの軒天の三角形の形状が入ることによってエッジの効いた特徴的なデザインが実現されています。この三角形の形状はシルバー系の金属パネルでできており、そうでないところは黒色の塗装になっているため色彩の対比も相まって、より目立つデザインになっています!

軒天に斜めを用いている事例はあまり多くないのですが、最近のものではオリンピック選手村であるHARUMI FLAGにある安田幸一氏によるデザインのマンションも特徴的なデザインですね。

該当部分を見るとこのような感じです。
色々な工夫が見て取れますね。

コーナー部の納まり

ホテルエントランス側は軒天の金属パネルは三角形ではなく、斜めの軒天が横一列に連続しているデザインです。
おそらくこちらの方がシンプルで安いので、あまり周辺からは見えにくい側なのでデザインとコストでの割り切りでしょう。
デザインの仕事はお金をいくらでもかけられるものではないので(巨匠や大物なら話は別でしょうけど…笑)コンセプトを守りつつできる範囲のことを探っていく作業が不可欠になります。

拡大するとこんな感じ。
先ほどとは異なり、ガラスの目地とパネルの目地がずれているのが分かると思います。これも割り切りでしょう。
素材や取り付ける位置によってコスト上・施工上最適な割り付け(部材の寸法)は変わってきます。
もちろん揃えられるに越したことはないですが、例えば下記の軒天のパネルをガラス手摺の目地に合わせようとするとパネルの枚数が増えます。パネルの枚数が増えると運搬の回数や取り付け部材、手間が増えますので=コスト増です。
コストをとるか、意匠をとるか、はたまた別な何かをとるかのせめぎあいをしながら世の中の建物はできています!

上階からの避難ハッチの下はこのように穴が開いたような見た目になります。
金属パネルと同面で蓋をして仕上げたいところですが、現状そういった製品は知る限りは無いようです。

また、終わり方も迷いどころです。
実際はバツっと切ったようになっていますが、赤線で描いているように斜めにしたい気持ちもあります。しかし、下側にはルーバーや設備があり欠き込みが中途半端に出てくるとあまりかっこよくないかもしれないし、それなら割り切って真っすぐにして終ろう!というやりとりがあったのではないかと想像します。

外構の石張り

このマンションは高台にあるため、道路から見るとぐるりと石張りの壁で囲われていることが分かります。

一般的には四角形が多い石張りですが、これはなんと台形や平行四辺形で構成されているという超特殊な形状です。
建物は三角形の軒天や折れ曲がったバルコニー手摺など角度のついたデザインがあるため、外構の石張りでもそのようなデザインのイメージを踏襲することで一体感のある仕上がりを目指しています。
石を鋭角に仕上げる場合、先端が欠けたりすることもあるので、きっちりエッジをきかせて作るのは難しいんですよね。

石の仕上げは3種類あり、
JP、水磨き、割り肌の3種で構成されています。
JPは最も一般的な仕上げです。水磨きは画像の左端にある反射しているところが該当します。
一見同じ感じに見えますが見る角度を変えたり光の当たり方が変わると反射するので差異をつけるのに役立つ仕上げです。
割り肌は荒々しく石の素材感が出る仕上げで、平らな石張りの中に入れるとアクセントとなりますが、凹凸が出てくるため通常の石張りよりも石厚が必要になり(t=50mm以上)、他の石張りとの段差の処理や石の質量が増えるためJPや水磨きと比較して金額が増です。

金属パネル+ガラスの手すり

次はバルコニーの金属パネル+ガラスの手すりです。
一見普通に見えるかもしれませんが、角をよく見て下さい。

そうです、なんとここも斜めになっているんですね!
ガラス自体は垂直に立っており、その外側に内側に倒れた金属パネルが覆っているという作りになっています。
ひたすら角度がついた建物のデザインですね!

また、通常のガラス手摺は縦のラインがもっと見えてくることが多いですが、この建物はすっきりしてます。おそらくこのような製品を使っているのかと思います。支柱自体は45㎜ですが、そこから持ち出した部材でガラスを抑えることで24㎜という見つけ幅とすることが可能になっています!
細い部材で構成されていると洗練されている印象が出ますね!

引用:https://www.sunrail.co.jp/flatrail/flatrail3.html

その他

その他に特徴的な箇所として、カーテンウォールのデザインが混在している点が挙げられます。
下記画像のガラス張り部分が該当箇所です。

一部、住宅側でも部分的にバルコニー無しのガラス張りカーテンウォール住戸があり、住戸価値を高めつつ外観デザインとしても特別感のあるアクセントとなっていますね。

マンションの場合、基本的に避難やエアコンの室外機置場の関係上バルコニーが必要になります。しかし、ホテルの場合はバルコニーでの避難は必ずしも求められておらず、また、空調の操作は各部屋でできるものの、おおもとの室外機は屋上などに集約されているためバルコニーが不必要です。したがって、このようにガラス張りでクールな印象を持つデザインが可能になります!

そういう意味で、オフィスとホテルの複合施設はデザイン上一体的に作ることが可能になります。
例えば、アマン東京のある大手町タワーはラウンジのある上階に一部デザインの変化がありますが、それ以外は基本的に同じデザインです。

引用:http://www.taisei-design.jp/de/news/2015/12_01.html

しかし、ここに住宅が入るとどうしてもバルコニー問題が出てくるため、
オフィスと住宅の複合施設ではデザインを一体的にしつつバルコニーを確保する工夫がなされています。
例としてワテラスや虎ノ門ヒルズが挙げられます。

ワテラス(赤い部分がバルコニー)
ちなみに上の方がバルコニーが少ないのは、一般的に上階は大面積で付加価値の高い住戸になることが多く、各部屋のエアコンの室外機をできる限り集約してバルコニーを極力少なくしてガラス張りの室内空間を実現してより付加価値をつけるためです!このように外観から間取りを想像することも可能になります!

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%86%E3%83%A9%E3%82%B9#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Waterras_tower.jpg

虎ノ門ヒルズ(赤い部分がバルコニー)
白いマリオンが下から上まで通っているので、バルコニーはあるものの全体としてみれば一体的なデザインに見えていますね。

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%99%8E%E3%83%8E%E9%96%80%E3%83%92%E3%83%AB%E3%82%BA

エントランスデザイン
館銘板もカクカクしたクリスタルのようなデザインです。

石割と幅を合わせたり、左上の角や一番下の角を石目地と合わせるなど細かい工夫も見て取れます。

エントランス柱も角度のついたデザイン

消防用水の送水口も角度のついたデザインとして、あえて目地を設けて金属パネルのデザインを踏襲

出庫灯もきちんとカバーをして処理
なかなかいつもデザイン的に悩ましいところでもある。。。

配置図の記載された看板もすっきりしたデザイン
ただ、見えにくい…笑


今回はプラウド恵比寿ヒルサイドガーデンのデザインを一級建築士の視点で紐解いてみました。
身近な建物のマンションですが、踏み込んでみると色々な要素で構成されているということが分かると思います。そういったことを踏まえつつコンセプトを体現したデザインを成立させ、それによって集客力や資産性を上げることがとても重要となります。この内容を見た上で色々なマンションを見ると、また違った発見や面白さがあると思いますよ!ぜひ新たな視点で見てみて下さいね!

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