新型コロナウイルスが世間を騒がす今日この頃、
皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
学校が始まらず、かといって旅行やアルバイト、
インターンも制限されている中で、
何かやれることはないか模索しているのではないでしょうか?
今回は
建築ソフトを学ぶことの重要性と無料で使えるソフトを紹介します。(一部有料)
建築ソフトを使える重要性
読書や旅行といったインプットによって
脳に刺激を与え、考えを深めたりアイデアを出すことは重要です。
一方で、実際に建築設計を生業として業務を進める上で
必須ともいえる建築ソフトを使いこなせるということも同様に重要です。
また、新しいデザインやアイデアというのは
読書や旅行などのインプットで生まれてくることもありますが、
新しいツールがもたらしてくれることもあります。
建築は学術的な面もある一方でエンジニアリングの側面も非常に強いです。
その中で新しい技術やツールが今までにない世界を切り拓いてくれたりもします。
アンビルドの女王と言われたザハ・ハディドもツールの進化によって、
その才能を存分に発揮することができました。
反対にツールがあるからこそ出てくるアイデアやデザインもあるのです。
技術とアイデアは一方的なものではなく、双方向性のあるものです。
したがって、技術・ツールを学ぶことも建築学について学ぶこと、
建築を見て体験することと同様に重要と考えます。
日本の学生はITが弱い
はっきり言うと、日本の学生はITが弱すぎます。
これは模型至上主義的なところがあるからなのかと思ってますが、
原因はどうであれ弱いことは事実です。
逆に言うと、模型のレベルは今まで会ったことのある20か国くらいの
建築学生の中では総じて高いと思います。
もちろん日本でもITリテラシーが高くCGガシガシ作る人もいれば、
海外でも模型を細かく作りこむ人もいるので当然一概には言えません。
ただし、明らかにそういった傾向があると思います。
一例を挙げると、2014年頃に北欧で働いていた時の設計事務所では、
35歳くらいのスタッフが自分でRhinocerosでモデリングして、V-rayでレンダリングをしてたり、
アルバイトに来てた建築学生がGrasshopperのコードを作ってたりしてました。
一方、日本ではどうでしょう。
35歳の設計者はCAD作業が精いっぱい。
アルバイトの学生に使えるソフトを聞くと、
良くても「Sketchupを触ったことがある」程度です。
nabeが「モデリングに自信ある?」と聞いて「ある」と答えた学生は
10%にも満たないです。
そういう意味で、ITに強いとそれだけでかなりの強みになります。
例えば最近友人の会社では某超大手アメリカ企業からプロポの誘いが来たそうです。
しかし、BIMを使えないという理由で外されたそうです。
建築の仕事をする上でアイデア、設計力ももちろん重要ですが、
このように業務を遂行するための能力の1つとしてITが必須になる時代なのです。
2020年4月現在、新型コロナウイルスの影響でIT化が急速に進みました。
今後は5Gなども出てきてITリテラシーがより必須になってきます。
WEB会議が当たり前になり、ITリテラシーの有無がそのまま格差に直結してしまいます。
ぜひこの機会に集中して取り組んでみてはいかがでしょうか?
では、具体的に何を学ぶべきか見ていきましょう。
2DCAD
AutoCAD&Vectorworks
設計事務所の2DCADの2大ツール
これらのどちらかを使っておけばとりあえず間違いないと思います。
特に大手ゼネコン、準大手ゼネコン
大手組織設計事務所、準大手組織設計事務所あたりは
ほぼこれらを使っていると経験上感じます。
どちらを勉強すべきかと問われると、
入りたい会社があるならばリサーチして
そのソフトを勉強すれば良いでしょう。
どちらが良いか分からない場合は、
Autodesk関連ソフトの3dsmaxやMayaやRevit
などの3DCADやBIMとの連携を考慮するならば
Autocadを勉強するのが良いと思います。
これは3DCADでもBIMでもなんでもそうですが、
1つソフトを使いこなせると、その他のソフトも概念を理解しやすくなります。
UIやツールの違いはあれどやること、やる目的は同じです。
そうするとソフトを覚えるのはかなり楽になります。
Autocadのダウンロードはこちらから
Vectorworksは残念ながら無料のものは評価版しかありません。
ただし、学生版も破格の値段で販売しているので
(と言っても学生にとっては高い値段ですが。。。)
興味がある方は購入も検討しても良いかもしれません。
Vectorworksの購入はこちらから
Jwcad
これは、比較的小規模の設計事務所や個人設計事務所が
使っていることが多いです。
商用利用は有料といった縛りが無いため、
学生、会社関係なく金額を抑えられるのは大きなメリットです。
しかし、上記の2つのソフトとは少し勝手が違うので、
学生の内にとりかかるメリットは低いと感じます。
Jwcadのダウンロードはこちらから
3Dモデリング
Sketchup
学生で使っている人が一番多いのではないでしょうか。
個人用途は無料かつUIもシンプルで直感的なため
とっかかりやすいと思います。
また、デフォルトのツールではできることの制限がかなりありますが、
プラグインが非常に多いので、上手く使うことで
3次曲面のような複雑な形状を作ることも可能です。
SketchUcation: https://sketchucation.com/
Googleが提供しているため、Google Earthにモデルを取り込むことで、
実際の敷地に建った時の周囲との関係も見れる強みや、
Layoutと連携させることで図面やプレゼンシートを作ることも可能ですし、
家具や植栽などの添景データも豊富です。
3Dwarehouse: https://3dwarehouse.sketchup.com/?hl=ja
ただし、Sketchupがその他のソフトと大きく異なる点は
座標が無い(厳密にはあるが、コントロールしにくい)ことです。
例えば、スプラインは2DCADでは各点と制御点の関係から
曲線形状が導かれますが、そういったことは難しいです。
面を作るのも3次曲面は簡単に作れず、三角形で構成されたりします。
このように、曲線は描けるますが編集したりは向いていないですし、
3次曲面を作ることはできますがサーフェスを編集したりするのは向いていません。
オブジェクトが物理的に存在しているだけで、
各数値(座標)によって形状が導かれているわけではないので
数値ベースでのモデリングには向いてないということです。
(説明が難しく、理解してもらえるか分かりませんが。。。)
したがって、Rhinocerosなどその他の3DCADとの互換性は良くないです。
とはいうもののとっかかりやすく、
使いこなせば業務でも十分に使えるソフトです。
初心者にはおすすめです。
Sketchupのダウンロードはこちらから
Rhinoceros
個人的に意匠系の設計をしたいなら覚えるべきソフトNo.1です。
自由な形状を作ることができますし、
Grasshopperを駆使することでデザインのバリエーションが格段に増えます。
Grasshopperを使うとこんなことが簡単にできるようになります。
各レンダリングソフトとの互換性も良いですし、
プログラミングができれば拡張性もより高くなります。
難点はマテリアルの表現はあまり良くないと思うので、
後述のV-rayのリアルタイムレンダーや
LumionやTwinmortionなどと同期させて検討したほうが良いでしょう。
Rhinocerosのダウンロードはこちらから
Rhino6.0からはGrasshopperは標準で入っています。
残念ながら無料版は90日間を超えると保存、プラグインが使えなくなりますが、
モデリングの勉強は90日を超えても続けられます。
3dsmax
Autodesk社の製品ですのでAutocadとの相性が良いです。
モデリングの仕方はRhinocerosやSketchupと比べると少し勝手が違います。
モディファイヤという機能を使っていくのですが、
粘土のようなイメージに近い気がします。
まずは大まかな形状を作り、
さらにモディファイヤの機能で色々な形状変化をさせて
より複雑なモデルを作っていくイメージです。
またHair&Furのような髪の毛や草などのモデリングは
上記2つのモデリングソフトより格段に上です。
Rhinocerosよりは建築デザインよりもアニメーション寄りと言われています。
そしてMayaの方がよりアニメーション寄りとなっています。
言うなれば 3dsmaxは建築とアニメーションの
ユーティリティープレーヤーといったところでしょうか。
3ds Max は 3D モデリングとアニメーションのためのパワフルなソリューションです。ゲーム開発者、ビジュアル エフェクト アーティスト、グラフィック デザイナーが、壮大な世界、印象的なシーン、魅力的なバーチャル リアリティ(VR)体験を創造する際に活用しています。
https://www.autodesk.co.jp/education/free-software/3ds-max より引用
また、CGデザイナーの友人曰く、V-ray for 3dsmaxは
RhinocerosやSketchupのV-rayよりもパラメーターが多く
より細かい調整ができるそうです。
3dsmaxのダウンロードはこちらから
Autocad同様学生であれば無償で利用できます。
しかし、最大の注意点はMacだと利用できない点です。
公式HPはこちら
もちろんBootcampなどをすればできますが、
それならWindowsでも良くない?とは思います。
なぜか建築学生はMacユーザーが多いですが(自分も使ってましたが。笑)
ソフトのことだけを考えるならば圧倒的にWindowsを使うことをお勧めします。
スペックに対する値段も安いです。
Maya
Mayaは3dsmax同様にAutodesk社のソフトです。
3dsmaxよりもさらにアニメーションやゲーム寄りです。
モデリング自体の容易さや建築デザインへの汎用性は3dsmax
アニメーションはMayaといったイメージでしょうか。
リギングができるため、キャラクターを動かす映像等に向いていますので
CG会社やゲーム、映像会社に行きたいのであればMayaをお勧めします。
また、MayaであればWindows、Macどちらにも対応できます。
Maya 3D は、3D コンピュータ アニメーション、モデリング、シミュレーション、レンダリング、合成などのクリエイティブ作業に必要な機能を完備し、拡張性に優れた制作プラットフォームを提供する 3D アニメーション ソフトウェアです。Maya は次世代の表示テクノロジーを使用し、高速モデリングが可能なワークフローや、複雑なデータを処理するためのツールを利用できます。
https://www.autodesk.co.jp/education/free-software/maya より引用
Mayaのダウンロードはこちらから
Unity & UE4
勉強中です
BIM
Archicad & Revit
BIMは本当に色々な種類があります。
各社でオリジナルで開発していたりするので、
ここでは、建築の意匠設計という視点で2つに絞りました。
意匠に特化するのであればArchicadがお勧めです。
操作性も分かりやすいと思います。
Rhinoceros、Grasshopperとの連携はどちらも可能です。
もし、RhinocerosやSketchup、3dsmaxなど
モデリングソフトを使ったことがある人は
Archicadの方が向いていると思います。
Revitの方がよりお堅いというか、施工的な面が強い印象です。
ゼネコン勤務を見据えている場合はRevitの方が良いかもしれません。
BIMは今後必要ですし、学生の内から触ることは悪いとは思いません。
しかし、BIMで一番重要なことはIの部分です。
ただ建物をモデリングするならば他のソフトでも構わないのです。
BIMとしてモデリングをするならば、各部材の形状、寸法、仕上げ
など(=I:Information)を想定した上で作っていく必要があります。
そしてそれらが仕上げ表や凡例にリンクしていることが強みです。
逆にそれをしないならばArchicadではなくRhinocerosやSketchupの方が良いです。
あくまで、設計から施工の一気通貫をするために
できるだけ情報を漏れなく齟齬無く網羅する、ということが重要です。
したがって、学生の内にそこまで想定してモデリングをするというのは
中々ハードルが高いですし、それよりももっと別なところに時間をかけるべきだと思います。
なので、BIMは学生の内に触る必要はあまり無いのかな、と個人的には思います。
ただし、モデリングから平面、立面、断面、展開図、パースが簡単に取り出せるため、
そういった面だけでも学生の内の設計課題に使用するメリットは大いにあります。
なので、BIMとしてというよりも3DCAD的な使い方で使えば良いかと思います。
Autocadのダウンロードはこちらから
Revtiのダウンロードはこちらから
レンダリング
Lumion & Twinmortion
おすすめのレンダリングソフトです。
どちらもまるでゲームをやっているようなUIで、
操作性も直感的で分かりやすいです。
片方が使えればもう片方は難なく使えることと思います。
空や光の変化が直感的に分かりやすいことや、
リアルな植栽、地形、地被の表現、人間など、
モデリングで作成するのは大変かつ重くなるデータが
デフォルトで入っているため、
モデリングの手間が軽減しますし、データも軽くなります。
人を歩かせたり車を走らせたりするのも簡単ですし、
動画を作成するのも簡単です。
大きな違いとしてはモデリングソフトとの互換性です。
Lumionは
- Sketchup
- Revit
- Archicad
- Vectorworks
- 3dsmax
- Rhinoceros
など
Twinmortionは
- Sketchup
- Revit
- Archicad
- Rhinoceros
など
Lumionの方が互換性が高いです。
また、 どちらも使った結果、品質もLumionが上だと思います。
ただし、Lumionも数年前までイマイチだったので、
Twinmortionも巻き返してくるかなとは思っています。
また、どちらもインポートしたモデリングデータが連携されているので、
元もモデリングデータを変更したらLumion上のモデルも更新されます。
ただし、Lumion上でモデルを修正したりするのには向いていないので、
あくまでレンダラーということは念頭に置きましょう。
Lumionのダウンロードはこちらから
Twinmortionのダウンロードはこちらから
V-ray
残念ながらV-rayは無料版はありません。
しかしアカデミック割引で74.0€で販売しています。
およそ1万円くらいなので安いっちゃ安いですが、
どのモデリングソフトを使うか明確でない場合は、
買うのは考えたほうが良いでしょう。
V-ray for Sketchup
V-ray for Rhinoceros
V-ray for 3dsmax
…
など種類がかなりあるので、
モデリングソフトをベースに考えるのであれば、
LumionやTwinmortionの方が互換性があり良いと思います。
ただし、V-rayは圧倒的なパラメーターの数があり、
突き詰めるとめちゃくちゃ綺麗なレンダリングが可能です。
なのでCG専門でいくのであればV-rayをお勧めします。
一設計者としてのレベルならLumionやTwinmortionで十分だと思いますが、
高品質レンダリングを目指したい方はぜひ挑戦してみて下さい。
V-rayのダウンロードはこちらから
終わりに
いかがでしょうか。
建築のソフトは多岐に渡り、それぞれ得手不得手があります。
また選ぶ会社や業種によっても変わってきます。
色々リサーチし、自分に合ったものを何か、
自分が作りたいものに適したものは何かを考えてた上で、
ソフトウェアを決定すると良いでしょう。
繰り返しになりますが、まずは1つを覚えることが重要です。
nabeはソフトは色々使えますが、いきなり全部をやったのではなく、
1つ覚えてまた1つ覚えて、という繰り返しの賜物です。
1つ覚えるとモデリングやレンダリングの概念が分かりますし、
こんなツールあるかな?という想像ができたりします。
結果として習得スピードが上がります。
そして使うツールが異なれば表現できるものも変わってきますし、
その都度適したツールを選択でき業務効率にもつながります。
まずは1つ、習得を目指して頑張ってみてください。
質問がある方は問合せ欄からどうぞ!