デザイン デザイン解剖 一級建築士

【超高級タワマン】隈研吾デザインのパークコート赤坂檜町ザ・タワーを紐解く【三井不動産】

スポンサーリンク

みなさんは

パークコート赤坂檜町ザ・タワー

というマンションをご存知でしょうか。

今回は日本でも有数の超高級マンションである、

このマンションのデザインを紐解いていきます。

パークコート赤坂檜町ザ・タワーとは

パークコート赤坂檜町ザ・タワーとは

三井不動産が手掛けた超高級マンションです。

公式HPより

立地は何と、東京都港区というだけでなく

東京ミッドタウン直結!

安藤忠雄が設計した21_21あたりから歩いていくと、

ブリッジを通り、2階のラウンジにアクセスすることができます。

2階は徒歩アクセス 道路に面した1階には車寄せがある。

デザインは世界的建築家であり、

新国立競技場をデザインした隈研吾です。

マンションをやることはあまりない隈研吾の

マンションデザインを見ていきたいと思います。

(資産性についても語りたいけど別の機会に。笑)

設計、監理は日建設計と日建ハウジングシステム

施工は大成建設です。

デザインコンセプト

まずはコンセプトを見ていきましょう。

コンセプトは“大樹”です。

具体的な内容については公式HPを見ていただくと分かりますが、

樹冠や樹皮、道管などかなり具体的なイメージを持ち込んでいます。

ミッドタウンには檜町公園もありますし、

木を使ったデザインが特徴の一つである隈研吾なので、

分かりやすいコンセプトかなと思います。

外観デザインだけでなく、ランドスケープや各種共用部も

地層や大地など明確な言葉を与えている徹底ぶり。

開発全体にコンセプトを展開しています。

ちなみに“大樹”というコンセプトの建物で有名なものには

ドミニク・ペローデザインの大阪富国生命ビルがあります。

ひと口に“大樹”と言っても立地や用途が変われば全然違うものになるのが建築の面白いところの一つですね。何をどう表現するか、というのがアイデアや腕の見せ所ですので。

デザインについて

大まかなデザインについては公式が語っているので、

ここでは一級建築士のnabeが実務的な視点で

デザインについて見ていきます。


まずデザインの大きな特徴は4つあります。

  • 樹皮と呼ばれる木調フィン
  • 最上階付近の市松状のガラスボリューム
  • 屋上の曲面壁面緑化
  • コーナー部の曲線

まず、木調のヒノキフィンですが、

一見すると本物の木材ですが、もちろん本物の木材ではありません。

DNPのARTTECという製品です。

金属パネルへ印刷している製品です。

本物の木材ですと耐久性やメンテナンス性の懸念があります。

特にタワーマンションの外壁は屋上のゴンドラからリフトを吊るして

清掃や部品交換などのメンテナンスを行うのですが、

メンテナンスが頻繁ですとその分管理費に影響が出るので、

住人としては望ましくありません。

また、雫と呼ばれるライティングのことも考慮すると

本物の木材よりも配線などの仕込みがしやすいはずです。

ちなみに断面は二等辺三角形になっており、それぞれ取り付け角度を変化させることによって動きのあるファサードを表現しています。

また、色調も薄いもの中くらいのもの濃いものを併用することで、工業製品的な画一性を無くしています。


次に最上階付近の市松状ガラスボリュームです。

これ、一見普通に見えるかもしれませんが、

意外とハードルが高いことをやっています。

考えてみれば、一般的なマンションではこういうの見たことないな。。。

と思われるはずです。

ハードルが高い理由としてはバルコニーが少ないことです。

タワーマンションでは、低層部はスタジオタイプと呼ばれるワンルームの30m2後半程度の単身用の部屋が多く、高層部に行くにつれて100m2越えの大きな住戸が出てきます。

大きな住戸ではその分エアコンが増えるため、バルコニーに置く室外機も必然的に増えます。

室外機は省スペースのために2段積みもできますが、透明のガラス手摺りを採用しているこのマンションで、外観上目立ってくる2段積みを選択することは隈さんはやらないでしょう。

ここで改めて写真を見返すと、大規模住戸があるはずの最上階付近ではバルコニーが小さすぎるんです。となるとどうやって処理しているか?

答えは屋上です。最上階付近であれば室外機をバルコニーでなく屋上に置いて、そこから繋ぐこともできますので、バルコニー面積を小さくすることができるのです。

工事費は増ですが、その分売り床となる専有面積を増やすことができるので、そこでコストと売値のいってこい、あるいは増を狙っているのだと思います。

次に、避難です。

タワーマンションでは避難ハッチが出てきます(条件については別途記載します)。

これは梯子のようなもので下の階のバルコニーに降りられるもので、降りたらまた次の避難ハッチで下の階のバルコニーに降りて、、、

と繰り返すことでどんどん下に降りていき、最終的に地上を目指すものです。

これは縦に通っていないといけない(専有部を経由してはいけない)のですが、

市松状にするとバルコニーの下が住戸になるので要件を満たせません。

これの処理としては、よーく見ると柱前のヒノキフィンのところはガラスのボリュームがありませんので、この背面部分にハッチがあると想像します。(※確認します)

このような処理を行うことであの特徴的な外観デザインを実現しています。


次に屋上の曲面壁面緑化です。

公式HPより引用

人が使える部分は緑化されていますが、それ以外のところは四角い金属パネルで構成されています。

公式HPより引用

一見すると緑色のリン酸処理風ですが、こちらもARTTECの製品です。

ARTTECのHPを見ると隈さんとの実績が多いのが分かりますね。

ちなみにこのARTTECという製品、オーダーできるので色や柄を作れるのですが、

型材に印刷はできないとのことです。

印刷されたパネルを曲げて構成するとのことですので、どうしても角はピン角にならず、丸くなってしまいます。型材にできるようになったら良いなあ。。。


コーナー部の曲線は柔らかい印象を作り上げています。

ガラスは多角形ですが、スラブが曲面ですので、遠目からは気になりません。

近くで見上げで見ると流石に影の落ち方が変わるので気になりますが。。。

ただし、曲面ガラスはコストも高いですし、きちんと作られていないと歪みが起こるので注意が必要ですので、妥当かなと思います。

スラブの出はそこまで大きくは無いので、スパンドレルは高さ方向で区画を確保しています。

この規模の案件でもやはりCWは難しいんですね。

CWは音や振動が上下階で伝播するのを懸念されることが多いので、なかなか採用されないようです。


いかがでしょうか。

超高級タワーマンションを一級建築士の視点で紐解いてみました。

身近な建物のマンションですが、踏み込んでみると色々と検討すべきことが多いです。

そういったことを踏まえつつコンセプトを体現したデザインを成立させ、それによって集客力や資産性を上げることがとても重要となります。

この内容を見た上で色々なマンションを見ると、また違った発見や面白さがあると思いますよ!

ぜひ新たな視点で見てみて下さいね!

-デザイン, デザイン解剖, 一級建築士

© 2025 Designabe Powered by AFFINGER5