どうもnabeです。
建築のデザインの仕事をしていると人にいうとよく
「センス良いんですね!部屋とかオシャレそう!」
「器用なんですね!模型とか楽しそうだけど私は不器用だからできないなー」
「じゃあ絵が得意なんですね!美大出身ですか?」
と言われることが多々あります。

いや~そうでもないですよ?
といっても信じてもらえず。。。

建築設計の仕事に携わっているとそういったイメージを持たれがちなのですが実状はどうなのか、また、自分は”センスが無い・不器用・絵が下手”と思っている人でも建築設計の仕事やデザインの仕事に就けるのか、について書いていきます。
センスと不器用はどうにかなる
まず朗報です。センスと不器用はどうにかなります。
これらはトレーニングや意識の改革だけで随分と改善します。
建築のセンスとはなにか
建築のセンスってなんでしょう。
平面計画の解き方?色彩感覚?面白い形態を作れること?
一般的に建築業界外の人が思うセンスは
”カッコいい・オシャレな空間をデザインできる”かどうかだと思います。
まずセンスとは身につけていくものです。新しい空間のカタチを考えたり、今までにない素材の組み合わせなどをする気鋭の建築家たちはたくさんいます。こういう人たちはセンス(発想力、アイデア力ともいえる)があると思いますが、40歳代でも若手と言われる建築家業界ですから実際に仕事を通してセンスは磨いていくものだと思います。
また、ファッション雑誌を例にとると雑誌に掲載されているコーディネートは「こういう服や小物の組み合わせで色合いはこういう風に留意すればまとまる」といった具体的な手法を示してくれるものです。ファッションに興味を持ち始めた人が雑誌の丸パクリから入って徐々に自分のアレンジを加えていって洗練されていくように、建築の世界もまた同様です。良い事例から学んで自分のものとしていくことでセンスは身についていくものです。

もう1つ、センスのあるなしに関わってくるのはコンセプト立案とその徹底ぶりだと私は思っています。いわゆるセンスのある、と言われる人たちはコンセプトを立てるのもうまいと思いますが、それ以上にコンセプトを愚直に表現しようとする力強さが特筆すべき点だと思います。
センスがイマイチな人にありがちなのは(自分も陥ってしまうことがあるのですが)コンセプトを作るものの、実際にデザインする際に余計な手を入れたり、実現性ばかりを気にして変にリアリティを追求しがちです。そうするとせっかくのコンセプトが中途半端になり、軸がブレ、結果もイマイチになってしまうのです。
コンセプトは徹底する。
コンセプトに直結しない要素は取り除く。
この2点に留意するだけでアウトプットは全然変わってきます。
そういう意味で、例えば藤本壮介さんはコンセプトの徹底ぶりが分かりやすい建築家だと思います。
例えば武蔵野美術大学の図書館ですが、本棚が壁一面を埋め尽くしています。圧巻です。
もしこれが、
「本棚上まで要らなくない?」
「本の落下が心配」
「ほこりがたまりそう」
とかそういうことを気にすると突き抜けたものはできません。もちろんそういった課題はあるもののそれは施主との打合せの中で決めていくことです。最初からあれこれ実現性を考えるのも当然大事ですが、コンセプトを体現する際には邪魔になるのも事実ですので、コンセプトを作る際は一旦置いておくことも重要です。

階段横の座れるスペースの下部も本が入るかどうかは別として本棚と同じデザインになっていますし、デジタルサイネージも本棚の寸法ではめ込まれている徹底ぶり。

外壁も柱の周囲に本棚を作ってその外にガラスを張るという、これまた徹底していますね。コンセプトを徹底することの重要性が分かるデザインの建物だと思います。
不器用な人はいない
次に不器用について。
建築を仕事にしていたり学んでいる人でも「自分は不器用なんですよね。模型とか苦手で」っていう人はいます。経験から言うと不器用な人って別に不器用な訳じゃないんですよね。

模型の話を例にとりますが、模型の上手い下手って器用不器用って話ではないんですよね。模型における器用って何?ってことを言いかえると模型が精緻で綺麗、ということだと思います。精緻で綺麗な模型に必要なことは具体的に何か。
それは細かい作業が得意ということよりも
・模型の完成イメージを持って部材の作図と切り出しをしているか
・どういう順番で作っていくと良いか考えているか
・部分的にモックアップ(お試し)を作って仕上がりを確認しているか
・水平、垂直を意識しているか
・直角をきちんととっているか
・面取りをしているか
・接着剤のはみ出しを少なくする工夫はしているか
・長さが足りないなどで隙間ができていないか
・0.5mm単位で部材をカットしているか
・部材の断面は垂直で綺麗にカットできているか
etc...
などなど、意識すべきポイントを押さえて実行しているか、につきます。
そして実行する際にOKを出す線引きのラインを自ら高く設定できるかが精緻で綺麗な模型に繋がって行きます。
器用 / 不器用という抽象的な話だと何も解決しないので、1つ1つの工程に落とし込みそれに対する意識がきちんとできれば誰でも精緻で綺麗な模型を作ることができます。
もちろん、厚みのあるスチレンボードを垂直に切ったりする等は技術の一つとしてありますが、それもカッターの刃を折ってから鋭利な状態でカットするとか、5㎜厚のボードであれば一度にカットするのではなく1回につき1㎜カット×5回で切るなど具体的な方法を知っていれば解決できる話です。
要はやり方を知って意識をすれば誰でも精緻で綺麗な模型が作れるということです。
(そういった意識を持てないのが不器用な人なんだよ!と言われたらそれでおしまいですが。)
絵の上手さはあったらより良い
続いて絵の上手さです。
これは必須ではないですが断然あった方が良いです。
どうしてもビジュアルで伝えることが多い業種ですので、絵が上手いにこしたことはありません。特に打合せ先でササっと描いたり、アイデア出しの際は何より手描きが一番早いので絵がうまいとアドバンテージがあります。
「絵がうまくなくても今はパソコンあるしCGで十分!」
という意見もありますが、CGを描くにも絵心は大事なので学んだり練習するのは無駄では決してありません。自分も絵はそんなに得意ではないのでCGを多用するのですが、事務所のボスに見せるとその上に色鉛筆で色を重ねてブラッシュアップしてもらうことも多々あります。絵がうまい人はCGを見ても絵として捉えるみたいですね。
例えば空気遠近法などの技法はCGでも奥行き感や超高層の場合の高さを表現するにも使いどころはあるので、絵が下手だからCGでやる!という場合でも絵の技法は学ぶとより良い表現になると思います。

センス・器用さ・絵の上手さは解決できる
まとめです。
どうも建築設計者やデザイナーというのは、一般の方から見るとハイセンスで奇抜な発想ができる人といった位置づけで見られることが多いみたいです。そういう人がいるのも事実ですが、だからといって全員がそうではありません。というかそうじゃない人が大多数です。
「自分にはセンスが無いし不器用だから…」
「子供が建築の仕事に就きたいらしいけど絵が下手だから…」
とか、そういった理由で建築の道を諦めるのはもったいないです。
とてもやりがいのある楽しい仕事だと思いますので、ぜひコンプレックスを克服して多くの人が選択肢の1つとして考えてくれたら嬉しいなーと思います。